世界で活躍する9名の有名調香師と代表する香水を紹介
こんなふうに思ったことはありませんか?
香水を楽しむには、香りだけではなく、それを創り出した調香師も知っておくと、より香りへの理解が深まります。
香水の物語には、調香師の理念やインスピレーション、そして魂までもが組み込まれています。
香水を通して、調香師の内面も垣間見ることができるのです。
これこそ、香水の楽しみのひとつとも言えます。
また、調香師には、ローズを生み出すのが得意な人、ムスクを自由自在に使える人など、それぞれ曖昧ながらも傾向が分かれており、自分が好きな香水の調香師の作品を試してみたら、その香りも好みだったなんてことも珍しくありません。
調香師を知るということは、香水への理解や関心が深まること。さらに、自分の好きな香りまでもが浮き彫りになることでもあります。
調香師とは?
調香師とは”パフューマー”とも呼ばれ、数々の香料を嗅ぎ分けられる能力を持ち、それらを組み合わせて香水を創る人を指します。
調香師になるために資格は要りませんが、1年のほとんどを香りに囲まれて過ごすため、鋭い嗅覚と、その体を維持する人のみがなることのできる限られた職業です。
狭き門ではありますが、世界的に香りの分野はどんどん広がっており、調香師を目指す人物も増えていると言われています。
まだまだ少数ではありますが、世界で活躍する日本人調香師も増加していますよ。
世界的に有名な7名の調香師
ジャック・キャヴァリエ、ソフィア・グロスマン、ジャック・ポルジュの3名です。
ここからは彼ら3名と、これからどんどん活躍していくであろう新進気鋭の調香師を紹介します。
ジャック・キャヴァリエ/世界三大調香師・オゾンノートの生みの親
ラベンダーの名産地でもあるグラース。
祖母の家は、いつもラベンダーで埋め尽くされていたそうです。また、父が調香師であったため、小さい頃から香りのノウハウを教え込まれ、8歳にして調香師になると周囲に宣言していました。
幼少期から香りに囲まれて育ったジャック・キャヴァリエは、匂いと光景がリンクする、香りが”見える”人へと成長します。
そんな彼の転機は、1992年に訪れます。イッセイミヤケの「ロー ドゥ イッセイ」です。
香水界で初めてオゾンノート(スイカのような潮風の香り)を創り出し、新たな革命を起こしました。
そしてその3年後に発表されたブルガリ「ブルガリ プールオム」は彼の代表作となります。
代表作:ブルガリ「ブルガリ プールオム」
〔ノート〕ダージリン、ムスク、カルダモン
ベルガモットやオレンジなどの爽やかなシトラスから、じわじわと立ち上がるムスキーノート。ソーピィーな雰囲気を漂わせながら、この香水の真髄であるダージリン(ベルガモット×カルダモン)が姿を現し、優しく香り立ちます。
ブルガリといえば「オ パフメ オーテヴェール」などお茶の香りを発表してきましたが、ダージリンの香りを再現したのはブルガリ プールオムが初めてのことでした。
また、合成ムスクの使用もこの香水の登場によって大きく発展したと言われています。
ブルガリ プールオムで大成功を収めたジャック・キャヴァリエは2012年、ルイヴィトンの専属調香師になりました。
ソフィア・グロスマン/世界三大調香師・バラの女王
1960年代に突入するとアメリカに移住し、IFF(International Flavors and Fragrances)の技術者として採用。
後にダウニーエイプリルフレッシュの香りをつくりました。
1970年代に突入すると、香水のパフューマーへと移り、1983年にはイヴ・サンローランで「パリ」を制作します。
代表作:イヴ サン ローラン「パリ」
〔トップノート〕オレンジブロッサム、バイオレット
〔ミドルノート〕メイローズ、ミモザ、アイリス
〔ラストノート〕サンダルウッド、ベチバー、アンバー
オレンジブロッサムとバイオレットの華々しいトップから、幾層にも折り重なったローズのブーケが一気に花開くミドルがこの香水「パリ」の特筆すべきところです。
ソフィア・グロスマンは、メイローズとブルガリアンローズを組み合わせ、ただのローズではなく、複雑で、さまざまな色のローズが目に浮かぶよう設計しました。
それらはやがてパウダリーなバイオレットとアイリスによってソーピィーになり、フローラル(生花)だけではなく、可愛すぎない香りを残します。
ソフィア・グロスマンは、その後もエスティ・ローダーで「ビューティフル」、ランコムで「トレゾァ」を立て続けに制作し、それらの香調から”バラの女王”と呼ばれるようになりました。
ジャック・ポルジュ/世界三大調香師・シャネルフレグランスを築き上げた男
1978年、シャネルからスカウトされ、当時香りのアップデートがなかったシャネルにおいて、メイクアップ部門とフレグランス部門を強化し、新たな革命を起こします。
1984年にはジャック・ポルジュの代表作となる「ココ」を発表しました。
ジャン=クロード・エレナ/エルメス調香師時代「庭」シリーズをヒットへ導く
小さい頃からジャスミンやローズ、ラベンダーが咲き誇るグラースを駆け回り、さまざまな香りに囲まれて育ったと言います。
香りへ慣れ親しんだ少年は、やがて精油メーカーに勤め、その後本格的に学ぶため調香師の学校へ入学しました。
1970年代に突入すると、ジボダン社のニューヨーク支店へ入社。
1993年にはブルガリで緑茶の香りを再現した「オ パフメ オーテヴェール」を制作。
これが大ヒットとなり、2004年にはエルメスの専属調香師へ就任しました。
代表作:エルメス「ナイルの庭」
〔ノート〕グリーンマンゴー、ロータス、シカモアウッド
アスワンからナイル川流域の川面に浮かぶ島にインスピレーションを受け、太陽の光を反射する川面と自然の豊かさを、グリーンマンゴー、ロータス、シカモアウッドで表現しました。
グリーンとウッディがとびきりフレッシュに香る、シンプルながら複雑なトワレです。
2000年代に入ると、より芸術性の高い香水を目指して「ザ ディファレントカンパニー」を設立。エルメスの専属調香師を去り、現在もフリーで活躍しています。
ジャン=クロード・エレナはベルガモットを深く愛しており、多くの香水にベルガモットをはじめとしたシトラスが使われています。彼の創り出す香りにはベルガモット、そしてシトラスが欠かせない存在です。
クリスティーヌ・ナジェル(ナジル)/エルメス調香師・香水に性別を問わない思考を持つ
学生時代は科学者を目指し邁進していましたが、アルベルト・モリヤスというひとりの調香師に出会い、調香師を志します。
1997年にはクエスト社へ入社。
多くのジョーマローンフレグランスを手掛けました。
中でも代表するのはカラリア 香りの定期便でも人気の高い「イングリッシュペアー&フリージア」です。
代表作:ジョー マローン ロンドン「イングリッシュ ぺアー & フリージア コロン」
〔トップノート〕キングウィリアムペアー
〔ミドルノート〕フリージア
〔ラストノート〕パチョリ
スプレーした瞬間からスプラッシュで果汁たっぷりなペアー!
そこからじわじわとフリージアの柔らかなフローラルが包み込み、ラストにはパチョリのアーシーな香りで締めくくります。
クリスティーヌ・ナジェルは、この香りを制作する際に、洋梨へかじりついた瞬間、果汁が顎へと流れ落ちる瞬間を再現したかったとコメントを残しました。
ジョーマローンでの功績が認められ、2014年にはエルメスの専属調香師へと任命されます。
以前のインタビューでは、女性が男性の香りをつけること、男性が女性の香りを纏うことはとてもセクシーだと答えており、ジェンダーレスの時代を先取りした考えを持っていたことも分かります。
ティエリー・ワッサー/ゲラン5代目専属調香師・ゲラン180年の歴史を託されし男
1961年にスイスで生まれ、幼い頃から大自然に囲まれて過ごした彼は、自然と植物に興味をもちました。1981年にはジボダン社へ入社します。
当時チーフを勤めていたジャン=クロード・エレナの元で働き、2002年にはクリスチャン ディオールの名香「アディクト」を制作しました。
同年、ゲランの調香師であるジャン=ポール・ゲランが退社し、ゲラン初となる同族者以外の人物、ティエリー・ワッサーが専属調香師へと選ばれたのです。
代表作:ゲラン「ラ プティット ローブ ノワール」
〔トップノート〕ブーケ
〔ミドルノート〕チェリー、アップル
〔ラストノート〕ホワイトアンバー、ムスク
フレッシュなブーケの立ち上がり。ミドルからはジューシーなチェリーやアップルがシロップのように甘く香り、次第にゲランならではのパウダリーに包まれてドライダウンします。
ミツコと同じ逆さハートのキャップ、ボトルには肩を大胆に露出した黒いドレスが描かれています。
キュートであり、セクシーでありながらも、ゲランらしいエレガントな雰囲気も併せ持つトワレです。
ティエリー・ワッサーはローズとバニラをこよなく愛する調香師。
このバニラなくしてゲランフレグランスは語れません。
ゲランフレグランスの全てを託された彼は、ゲランの品質を落とさず、維持するために一年のうち1/4は世界中を駆け回っていると言われています。
フランシス・クルジャン/MFKを創り出したムスクの魔術師
10代の頃より香りに興味をもったクルジャンは、香料国際高等学校へ入学。
卒業後はクエスト社へ入り、26歳という若さにしてジャン=ポール・ゴルチエ初となるメンズフレグランス「ル マル」を制作します。
2001年には優れた調香師に与えられる「フランソワ・コティ賞」が授与されました。
そのあともクルジャンの大進撃は止まりません。
1999年にはエリザベス・アーデンの「グリーンティー」、2006年には紙でできたお香「パピエ ダルメニイ」も制作しています。
そして2009年、自身初となるフレグランスブランド「メゾンフランシスクルジャン」を創設しました。
代表作:メゾン フランシス クルジャン「アクア ユニヴェルサリス オードトワレ」
濃度 | オードトワレ |
香り | カラブリア産ベルガモット シシリー産セドラ
リリーオブザバレー
モックオレンジブロッサム
ムスキーウッド
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中世の古典的なコロンを、合成香料を用いて現代版に仕立てることをコンセプトに、洗い立てのリネンやシャツと素肌の間の香りを再現しました。
スプレーした瞬間こそ、レモンのツンとした香りが目立ちますが、次第にクルジャンならではの透明感溢れる冷たいムスキーノートがふわっと軽やかに香り立ちます。洗濯機から出したての洗濯物の香りにとても近いです。
クルジャンは、この、ソーピィーとも、オゾンとも言い難い、新しい香りを創り出したのです。
彼は新たな香水を手掛けるときに、制限をかけず自由に調香すると言われています。
この自由な調香があってこそ生まれたのが、この新しいムスキーノートであるアクア ユニヴェルサリスなのでしょう。
クルジャンの創り出す香りは、どれも透明感に溢れ、柔らかく優しいムスクが感じられます。香水愛好家の間では”ムスクの魔術師”と呼ばれ愛されているのです。
世界で活躍する日本人調香師
ここではこれからどんどん世界へ羽ばたき、新たな香りを生み出してくれるであろう2名の日本人調香師を紹介します。
大沢さとり/和の伝統文化を香りを通して伝え続け、世界からも注目される調香師
2000年に香水サロン開設、2003年から「パルファンサトリ」で香水コレクションの発表を開始し、2018年には日本の独立系ブランドとしては初めて「Perfumes the Guide」(ルカ・トゥリン等著)に5作品が掲載されました。
中でも“ハナ”ヒラクはNew Accord TOP10に選出されています。
活躍は自身のブランドにとどまらず「HOTEL THE MITSUI KYOTO」(京都市中京区)「ザ・ペニンシュラ東京」(東京都中央区)のルームアメニティや人気ヘアケアブランドなどの調香師として起用され、ラグジュアリーブランドの調香師としても人気。
世界に誇る日本ブランド「JAXURY AWARD」には3年連続選出、2023年には香りの外交官として和の伝統を伝え続ける活動が認められ、文化庁より「文化庁長官表彰」を授与されています。
代表作:SATORI/Parfume Satori
自身の名前をつけた大沢さとりの代表作「SATORI」は、香道で使われる最高級の香木「伽羅」から、静かに立ちのぼる一筋の香を表現した日本の名香です。
「Perfumes the Guide」(ルカ・トゥリン等著・2018年)では5種の作品が4つ星に評価され、「SATORI」限定シリーズである「茶壷」は、フランスの国際香水博物館(グラース)にも収蔵されています。
ともすれば主張の強いウッディ系の香りの中で、静けさを見事に表現したこの作品は、まさに日本の文化を象徴するような美しい香りです。
稲葉智夫(モス、ナイチンゲール/ズーロジスト)
自身も調香師を勤めており、ニッチフレグランスブランドのズーロジストで2016年に「ナイチンゲール」、2018年に「モス」を調香しました。
幼少期より植物が覆い茂る庭のある家で育った稲葉氏は、自然と植物に興味を持ち、そこから独学で植物と香りについて学びます。
時に世界中を駆け回り、香水に使われる植物の蒸留所や農園を訪れました。
そんな稲葉氏のデビュー作となったのが、ズーロジストの「ナイチンゲール」です。
ズーロジスト初となる日本人調香師が手がけたこの香水は、なんと梅×シプレという珍しい香調です。
和歌に着想を得たこの香りは日本らしい新たなシプレとなりました。
そしてその2年後には同ブランドにて「モス」を制作。
サフランやクミン、シナモン、ブラックペッパーなどのスパイスの立ち上がりから、じわじわと姿を見せるハニーがまったりと香りを覆います。
ヘリオトロープなどのフローラルもしっかり主張し、スパイスとハニーの調和が見事なフレグランスです。
美術館で芸術家を知るように、香水で調香師を知り親しむ楽しさ
美術館で芸術家を知るように、香水で調香師を知ると、香水の見方も変わってくることもあるでしょう。
そのときはぜひ、調香師を通していろいろなインスピレーションを得たり、親しんでみてください。
きっと香水への愛がより深まるはずです。
また、ネットやお店で香水を選ぶときもさらに楽しさが増えるかと思います。
調香師は、今回紹介した人物のほかにも数えきれないほど多く存在します。ぜひ調香師を知るというディープな目線からもも、香水を楽しんでみてください。
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